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「あいつ言えばヤラセてくれるらしいぞ」
「へぇ、じゃあ言ってみようかな。割り切った関係って楽だよな」
そんな下世話なことで盛り上がってる男子たち。
話題に上がってる「すぐにヤラセてくれる女子」はあたしのことだ。
忘れ物をしてしまって、取りに戻ろうと一旦下まで降りた階段を登って、自分の教室へと向かっていると中から聞こえてきた「そういえば両坂の話知ってる?」とあたしの苗字が聞こえてきたとこであたしの足は止まった。
きっとその噂を流したのは元カレだろうなーと予想するけど、別にどうだってよかった。どうでもいい人に何を思われても構わないし「ヤラセてくれ」と言われても断るだけだし。
「気持ち悪ぃ」
誰もいないと思っていた、廊下にボソッとそんな言葉が広がる。
「……っ、哲太」
「マジで気持ち悪い」
軽蔑した眼差しでみて、それからあたしに背を向けて歩き出す。
「……っ、まって哲太」
「気持ち悪いから触んなよ」
哲太の腕に触れたあたしの手を思い切り振りほどく。
──気持ち悪ぃ
その日からずっとこの言葉はあたしの脳裏にピッタリくっついて離れなかった。
卒業するまで哲太のことはずっと避けたし、卒業してからもずっと会ってない。
なのにどうしてこんにずっと残っているのか、それはあたしがあの時も今も哲太に恋をしているから。
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