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ちらっと彼女は私を見ると、渋い顔のまま口を開いた。
「いじめたわけじゃないからね。私はああいう、世間知らずの若い娘が、心配なだけなんだよ。余計なことを言って、奉公先から暇をだされたら可哀そうだろ」
ええと私は真面目な顔でうなずいた。
「もちろん、わかってます」
「あんたも確か、奉公先を探してるんだよね。だったら、噂話には気をつけることだよ。自分が知ったことは、たとえ家族にでもべらべらと喋っちゃいけない」
「わかりました」
おばさんの言うように、私はもう何年も奉公先を探していて、人に会えば必ず、働き口はないかと訊ねている。
山での暮らしに不満はないけど、もっと広い世界を見てみたいのだ。
もっと多くの人たちと出会ってみたい。
「でも、全然、奉公先は見つかりません。私のような山育ちでは、やっぱり無理なのでしょうか」
おばさんは私の顔をじっと見つめ、息を吐いた。
「そのまま山でのんびり野菜を育てて、よさそうな嫁ぎ先を見つけて、嫁に行くのが一番だと思うけどね」
「そうでしょうか」
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