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「そうに決まってるよ。カザリちゃんは頑丈で働き者だから、嫁の貰い手なら簡単に見つかるよ。なんなら、私が探してあげようか?」
私が微笑むと、おばさんは笑顔になった。
「考えておきなよ。私は本気だからね」
「でも、私はもっといろいろ経験してみたいんです」
ため息をつくおばさんに、私は頭を下げた。
*
その翌週のこと。
いつも通りに、私と星丸は山を下りて城下町へ行った。
星丸が薬を売りに行って、しばらくしてからだった。
まだ人の少ない通りに、ふらりと白髪の老人が現れた。
武士だと一目でわかる服装で、腰には刀を差している。
彼はすたすたと私に向かって歩いてくると、目の前で足を止めた。
「なにか御用でしょうか?」
姿勢をただして訊ねると、老人はじろじろと私を見て、小さくうなずいた。
「おまえは木山カザリという娘か?」
私は改めて老人をよく見た。
皺は多く痩せているが、筋肉質でまなざしは鋭い。
「はい、そうでございます」
老人は私の前に並べた野菜や花を、じろりと一瞥(いちべつ)した。
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