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「そうか。そなたが奉公先を探していると耳にして、会いに来た」
私はぱっと目を見開いた。
「そうでございましたか! はい、わたくし、ご奉公できるお屋敷を探しております」
「わしは早房家(はやぶさけ)の家臣、初島重三郎(はつしまじゅうざぶろう)じゃ。そなた、うちで働く気はあるか?」
早房家の名前はよく知っている。この御城下で、尾山(おやま)家、沢村(さわむら)家に並ぶ、由緒ある武家だ。
ちなみに、よねちゃんは沢村家に奉公している。
そんなきちんとした武家が、道端で野菜を売っている見知らぬ娘を奉公人として雇いに来るのは、もちろん普通ではない。
「私でよろしいのですか?」
「かまわぬ」
初島さまは即答した。
「来るのか来ないのか、いますぐ決めるのじゃ」
「参ります」
私も即答すると、初島さまの目の奥が、すこし揺れたように見えた。
「よろしい。支度にははどれくらいかかる? できれば、すぐにでも来てもらいたいのだが」
「では明朝に伺わせていただきます。今夜、父母に挨拶をすませましてから」
「それでよい。屋敷の場所はわかるか?」
「存じております」
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