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1 奉公先は幽霊屋敷
「姉さん、ここにタケノコあるよ!」
嬉しそうな星丸(ほしまる)の声に顔を上げると、私の脇で寝そべっていた兄弟犬のシロとクロが、尻尾を振りながら駆けていった。
「食べるなよ! 今日の夕餉にするんだから」
ゆるやかな傾斜に生えた竹藪には、春の日差しが差し込んでいる。
はいつくばってタケノコを掘っている弟の両側で、犬たちも無我夢中で土をかいていた。
あたり一面にタケノコのてっぺんが顔を覗かせている。
「しばらくはタケノコ尽くしになりそうね」
私は背負っているカゴを揺すりながら笑った。
キノコを採りにきたのだが、もうだいぶ少なくなっていたので、がっかりしていたところだ。
「母上はタケノコが好きだから喜ぶね」
「そうね。カゴいっぱい採ってきましょ」
私たちは背中のカゴから溢れるぐらいタケノコを詰め込んで、山の中腹にある家に帰った。
我が木山(きやま)家は、家の周囲に大きな畑を持っている。
そこで育てているのは、薬草や野菜に花だ。
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