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母のハナは薬草の知識が深く、父の烈(れつ)と一緒に薬を作って城下町で売っている。
新鮮な野菜や花も人気で、山で採れる山菜やキノコも評判だ。
「おや、タケノコをずいぶん採(と)ってきたんだね」
薬草園にいた母は、戻ってきた私たちを見て笑顔になった。
「俺が見つけたんだよ。まだいっぱいあるから、母上も明日一緒に行きましょう」
「いいけど、夜のうちに、イノシシや猿に食べられないかしら?」
「そう思って、枯れ葉で隠しておいたから大丈夫」
得意そうに星丸は胸を張り、カゴから一番大きなタケノコを取り出して母さんに渡した。
「父上は?」
私は手斧が刺さった切り株を見ながら訊ねた。薪にする枝が山積みのままだ。いつもなら真っ先に片付けてしまうのに。
「川に行っているよ」
母上はタケノコの重さを確かめながら答える。
「なら今夜は魚にもありつけるね。大きいの釣れるといいなぁ」
舌なめずりをしている弟をちらっと見てから、私は川の方角を振り返った。
おそらく、ウサギ殿が会いにきたのだろう。
ウサギ殿は忍びだ。
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