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私たちが元いた忍びの里から、たまに父さんに会いに来る。
里のお頭(かしら)、玄明(げんめい)は父さんに目をかけていたこともあり、様子を窺いにウサギ殿を寄越すのだ。
そう。
私たち家族は元々、忍びだった。
私はいま十七で、八つの年まで忍びの仲間と共に暮らしていたのである。
里の忍びは数十人ほどいて、大人も子供も毎日過酷な修行をしていた。
(いつか役目をもらって、立派に果たしてみせる)
私はそう意気込んでいたが、ある日突然、私たち家族は里を追われることになった。
父がお頭の金を盗んだと疑われたせいだ。
私たちの住まいから、見覚えのない大金が見つかって、私たちは捕らえられた。
父を嵌(は)めたのが誰かは、わかっている。
ネギという男だ。
ネギはお頭の甥として目をかけられている父のことを、ずっと疎ましく思っていた。
このまま里にいたらネギになにをされるかわからない、と案じたお頭は、私たち一家を追放することで助けてくれたのだった。
「私も手伝ってくる」
私は背中のカゴをおろして、川に向かった。
私の足なら、川にはすぐ着く。
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