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ざざざと激しい風が吹き、木々の枝は大きく揺れた。ウサギは涼しい顔で腕組みをして枝の上に立っている。
「里も変わりはないですか?」
「ないよ。気になる?」
「いえ」
ふふふとウサギ殿は笑い、しゅたっと地面に飛び降りた。おとなしく地面にふせていたシロとクロが、尻尾を振りながらウサギ殿に飛びつく。
「なにか困ったことがあったら、遠慮せずに話しておくれ。さらば」
ウサギ殿が一礼し、私も一礼した。
顔を上げた時にはもう、ウサギ殿は消えていた。
犬たちもきょとんとして、まわりをきょろきょろ見ている。
私は川へは行かずに家に戻った。
それから半刻(一時間)ほどして、父上はカゴいっぱいに魚を獲って帰ってきた。
*
それから数日後。
まだ外が薄暗い朝に、私と星丸は山を下りた。
川を小舟で渡って丘を越えると、城下町がある。
私は市場で野菜や花を売り、星丸は薬を売り歩く。
「早く売り切ったほうが、帰りの荷物を持つってのはどう?」
薬を包んだ大きな風呂敷を背に、星丸が賭けを提案する。
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