1 奉公先は幽霊屋敷

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 近くの武家に奉公しているそうで、安い野菜を探しに市場によく顔をみせる。 「おはよう、カザリちゃん」  小走りでやって来た彼女は、私を見て微笑んだが、顔色が冴えなかった。 「よねちゃん、どっか悪いの? 風邪でもひいた?」  はっとしたようによねちゃんは私を見ると、困ったような表情を浮かべた。 「私はなんでもないの……」  私が小首を傾げると、彼女は顔を寄せて囁いた。 「知り合いの女の子がね、皮膚の病にかかってしまったのよ」 「皮膚の病? それは心配ね」 「顔が火傷みたいに、ただれてしまったんだって」 「火傷みたいに……原因は?」  よねちゃんは顔をしかめた。 「それがね、朝起きたら突然そうなってたんだって」 「寝ている間にってこと? 考えられるとしたら、毒虫に食われたとかかしら」 「どうなのかしらね……」  虫だとしても、火傷みたいに顔がただれるとは、聞いたことがない。 「その子はどんなとこに暮らしてるの?」 「この御城下にある武家よ。そこで奉公してるの」
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