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近くの武家に奉公しているそうで、安い野菜を探しに市場によく顔をみせる。
「おはよう、カザリちゃん」
小走りでやって来た彼女は、私を見て微笑んだが、顔色が冴えなかった。
「よねちゃん、どっか悪いの? 風邪でもひいた?」
はっとしたようによねちゃんは私を見ると、困ったような表情を浮かべた。
「私はなんでもないの……」
私が小首を傾げると、彼女は顔を寄せて囁いた。
「知り合いの女の子がね、皮膚の病にかかってしまったのよ」
「皮膚の病? それは心配ね」
「顔が火傷みたいに、ただれてしまったんだって」
「火傷みたいに……原因は?」
よねちゃんは顔をしかめた。
「それがね、朝起きたら突然そうなってたんだって」
「寝ている間にってこと? 考えられるとしたら、毒虫に食われたとかかしら」
「どうなのかしらね……」
虫だとしても、火傷みたいに顔がただれるとは、聞いたことがない。
「その子はどんなとこに暮らしてるの?」
「この御城下にある武家よ。そこで奉公してるの」
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