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「武家の奉公人なら、ひどく不衛生な場所で寝起きしてるわけないわよね。一緒に暮らしている他の人たちも、同じ症状が出ているの?」
よねちゃんは首を横に振る。
「一緒の部屋に寝てた他の奉公人たちは、平気だったんだって。その、ひさちゃんていう子だけなの」
ちょっと、と隣で話を聞いていたらしいおばさんが、叱るようによねちゃんを制止した。
「もうおよし。余計なことを言いふらすもんじゃないよ」
よねちゃんはびくっとしておばさんを見ると、ごめんなさいと小声で謝って、急いでその場を離れた。
私はすぐに彼女のあとを追って、呼び止めた。
「これ、持っていって。よねちゃんのためにとっておいたのよ」
タケノコを差し出すと、彼女はしょんぼりした顔で受け取った。
「ありがとう。ごめんね、余計なこと喋っちゃって」
ううん、と私は小さく顔を横に振った。
「またなにかあったら教えて。来週もまた来るから」
よねちゃんと別れて売り場に戻ると、おばさんは帰り支度をしていた。
漬物はすべて売れて、残った葉野菜は持ち帰るつもりのようだ。
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