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その声は、文字通り頭上から降りかかった。
このような状況で無かったら、舞翔は間違いなく心躍っていたのだろう。
けれども今はまるで死刑宣告のように感じられた。
少し高めの良く通る声に、落ち着いた、けれどもどこか冷たくとげとげしい口調。
踊り場で倒れ込んだ二人を、二階から見下ろしながらその人物は不機嫌そうに顔を顰めていた。
「あー悪い悪い、すぐ行くからっっ」
慌てて立ち上がった武士だったが、片腕が動かせず更に痛みもあるのだ、案の定立ち上がれずに堪えるようにしゃがみ込んだ。
我慢するのにも限界はある、ようやく表情に苦痛が表出した武士は、眉を顰め冷や汗までかき始めていた。
「まさか貴様、怪我をしたのか?」
その事に一目で気付いたソゾンは、とても冷たい顔ではっと武士を見下ろした。
「そんな女を助けるために?」
凍てついた視線、蔑んだ瞳。
ソゾンの言葉に舞翔の胸がまるでナイフで抉られたようにズクリと痛む。
舞翔の手は震えていた。
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