第1話 『烈風飛電バトルドローン』

2/7
前へ
/541ページ
次へ
「お母さん、おはよう~」 「おはようって、あんた早くしないとまた登校班に遅れるわよ!」 「大丈夫大丈夫、私準備早いもん」 「そう言っていつも髪も整えないで! 小6にもなってまったくもう」  舞翔はエアコンが効いた涼しいリビングへ、欠伸(あくび)をしながら入って来た。  ボーイッシュに短く切り揃えられた栗色の髪が、母、三都子(みつこ)の言う通り、寝癖であちらこちら跳ねており、逆にセットしたようになっている。  三都子は、呆れ顔でダイニングテーブルにトーストを置いた。なんだかんだ優しい母は、舞翔が起きて来るのに合わせて、トーストを焼いてくれる。  舞翔はまずは洗面所へと向かうと、水道管の中で熱されて、ぬるくなった水で顔を洗った。  それから寝癖を直すべく鏡を見る。   大きく(つぶ)らだが睫毛(まつげ)が短く、一重(ひとえ)で日本人らしい目。  形は悪くないのに、薄くてぱやぱやして見える眉毛。  そんな自分の顔が嫌いではないが、男の子みたいだと舞翔は思っている。  実際は丸みを帯びた輪郭と、小さ目の口がいかにも女の子らしいのだが、そこには気付いていないようである。 「ちょっと、結局寝癖そのままなの?」 「いいのいいの、それっぽいでしょ」  舞翔は食卓へと戻ると、テーブルに着いて早々(そうそう)トーストを頬張った。 「あんた、本当に登校班間に合うんでしょうね?」 「もう着替えてるもん、あとはランドセル背負って家を出ればいいだけだよ? 遅れない遅れない」  舞翔は安心してゆっくりと朝食を味わうことにした。  絶妙な焼き加減に、バターが溶けた匂いが鼻腔をくすぐり、口の中が幸せに包まれる。  実に平和な朝。 「あ、いつもの始まる時間だわ! 舞翔、チャンネル変えて」 「ん〜? あぁ、リモコンリモコンっと」  舞翔はパンを持っていない方の手でテーブルの上のリモコンを取ると、ボタンを押した。  ちょうど良く、テレビから情報番組のオープニングテーマが流れ始める。  それを眺めながら舞翔が咀嚼(そしゃく)していると、三都子が牛乳をコップに入れて持ってきてくれた。  片手にトーストを持ちながら、もう片方の手でコップを持ってごくりと一口含む。  テレビでは騒がしく何やら中継が始まるようだ。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加