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『今週末、日本で開会式が行われます! 第一回バトルドローン世界大会に出場する選手が、ぞくぞくと空港に到着しております!』
リポーターがそう言って、到着口に現れた選手たちの下へと、人波をかき分け向かって行く。
空港内はすごい人で、選手を生で一目見ようと、たくさんのファンが押し寄せている。
テレビの向こう側とは言え、暑そうだ。
「あら、これってあんたがいつも夜遅くまでいじってるやつじゃない?」
三都子はアイスコーヒーを片手に、舞翔の向かい側に座ると、そう言って舞翔を見た。
「バトルドローン! ドローンを操作して戦って、相手を先に墜落させた方が勝ちというシンプルな競技ながら、ドローンのタイプや操作テクニック、更には風や地形を利用する知識まで要求される実はめちゃくちゃ奥深い競技で……」
「あ、ほら。あんたが好き好き言ってる選手が来たわよ」
「え!? ソゾン!?」
舞翔はテレビを食い入るように見詰めた。
フラッシュがこれでもかとたかれる中、ひとりの選手が、颯爽と警備に確保された通路を歩いて行く。
肩程まであるラズベリーレッドの髪を、前髪から殆ど後ろに逆立てるように流し、一束だけひょっこりと顔の前に垂れている。
露出した額に短めの眉、きつい印象の切れ長な吊り目から覗く、透き通るようなシアン色の瞳。
流れるような輪郭に、一本筋の通った鼻梁が彼を美青年たらしめている。
「すごい、黄色い声援ねぇ。相変わらず女性ファンの多いこと」
「うっ、確かにソゾンは容姿が良いから女性ファンは多いよ」
「でしょうねぇ」
「でもでもっ、本人はファンサービスなんて一切しないんだから! 常に無表情で、笑顔を見た者はいないって噂まであってっ!」
「はいはい、また舞翔のいつものが始まったわね」
三都子は少し呆れたように目を閉じて、ごくりとコーヒーを飲む。
『ソゾン選手のバトルスタイルは、冷酷非情と言われていますよね』
テレビの画面が、中継からスタジオへと戻った。
アナウンサーが大きなパネルを使って、選手の説明を始めるようだ。
『相手を捕らえ吸血鬼が血を吸うように、じわじわと確実に相手を堕とすのが特徴的ですよね』
『そうなんです、【冷血の吸血鬼】、なんて二つ名が有名ですよね』
そこで再び、画面は中継へと切り替わる。
舞翔はきらきらした目でテレビ画面越しのソゾンを見つめた。
「あんたはこういう顔が好きなのねぇ」
「顔じゃない! ソゾンはエフォートって言うバトルドローンのエリート施設で常にトップを守り続ける超努力家なの! 私はトップになっても研鑽を続けるところを尊敬して」
「ほら、インタビュー受けるみたいよ」
「え!?」
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