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「っ」
涙の香りが鼻腔を擽る。
膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪えて、高鳴り過ぎて痛みすら感じる心臓を、片手で押さえ付ける。
アニメでは描かれなかった、少しごつごつとした手と甲の血管まで見えてしまって、思わず卒倒しそうになった。
現実に、ソゾンという人物が、そこには居る。
「来世まで推せる」
その余りの神々しさに、舞翔が思わず拝むように手を合わせた瞬間。
「空宮?」
それは、起こった。
「え?」
「やっぱり、空宮だ!」
会場がざわめいた。
声の方に思わず、視線を向けてしまった舞翔は、その行動を激しく後悔する。
くりっとして意志の強い瞳が、はっきりと自分を見詰めている。
「っっ!!」
舞翔は武士に見つかった。
この、重要で重大なアニメのシーンの、真っ最中に。
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