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無我夢中で走って、地に足も着いていなかったのだろう。
何かに足がひっかかったと、気付いた時にはもうバランスを崩して前のめりになっていた。
しかも運悪く、そこは階段だったのである。
転ぶだけでは済まないことくらい、一瞬で理解出来た。
あ、これはもしかしたらヤバイかも。
舞翔はやけに冷静にそんな事を思い、最早成す術も無く衝撃に備えて目を瞑った。
誰かが舞翔の腕を掴んだのは直後だった。
手首に感じた強い感触、同時に体中が何かに包まれ、どんという衝撃音がしたのに、体にそれほどの痛みは走らない。
嫌な予感しかしなかった。
目を開くのが怖い。
周囲から悲鳴が沸き起こり、一階からもざわざわと喧騒が聞こえ出す。
「いっててて」
耳元で聞こえたその声に、舞翔はがばりと体を起こした。
「怪我ないか? 空宮」
武士がにへらと笑っていた。
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