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やっぱり手が動かなくて、と武士は苦笑した。
その笑みの片隅にも苦痛が見て取れる。
きっと相当に痛いに違いない。
それなのに舞翔を気遣うように、武士は笑っている。
そう思った瞬間、心臓を締め付けるような痛みが走り、舞翔はきつく眉間に皺を寄せた。
「で、できない。私、エレキストは持ってきてない」
「そっか、お前のバトルドローンはエレキストって言うんだな」
武士は何故かとても嬉しそうに頬を緩めた。
舞翔の口から愛機の名前が出て来たことが、まるで心底嬉しいように。
少しだけ痛かった肩を掴む力が緩む。
「俺の“ゲイラード”を使ってくれよ」
舞翔は目を瞠った。
「出来ない!」
反射的に声が出ていた。
けれども武士はその表情を緩める事無く、真剣に舞翔を見詰めている。
「空宮なら出来る」
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