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呼び止めておきながらいつまでも黙り込む舞翔にしびれを切らし、ソゾンは再び歩き出すため掴まれた手を振り払おうとした。
けれどもそれは叶わなかった。
更に強い力で腕を掴まれ、ソゾンは僅かに目を見開く。
舞翔は俯いていた。
心なしか呼吸が荒くなって、嫌な汗が滲んでくる。
やるしかない、やるべきだ、やりたい。
そうは思うのに、どうしても踏み出すことが出来ない。
自分なんかが、自分はただのモブなのに。
前世からずっと、そうだったじゃないか。
モブが主人公になれるはずなんか、ないんだ。
「空宮、頼む! 俺の代わりにソゾンと闘ってくれ!」
けれども武士のその言葉が、とうとう舞翔の重い腰を動かした。
“主人公の代わりに”。
そうだ、これは主人公の腕を怪我させた償い。
そしてこのバトルは、あくまで武士の代理!
大義名分が冠された瞬間、舞翔の中で心を締め付けていた箍が弾けた。
「っ、私が、バトルする!」
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