第1話 『烈風飛電バトルドローン』

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 悲しみを誤魔化すように、孤独な少女は寝ても覚めても寝食(しんしょく)よりも、バトルドローンに傾倒するようになっていった。  子供から青年になっても、執着にも似た情熱は絶えなかった。  やがて、各地の大会を総ナメするほどのレベルにまで登り詰め、第一回バトルドローン世界大会に、見事出場(みごとしゅつじょう)。  惜しくも優勝は逃したものの準優勝を果たす。  そんな舞翔の前世の青春は、まさにバトルドローン一色(いっしょく)と言っても過言では無い。  そして、そこまでバトルドローンにひたむきになれたのは、推しの存在があったからこそだった。  『烈風飛電バトルドローン』に出て来る“ソゾン・アルベスク”。  アニメ第一部のボスであり、主人公の最大のライバルである彼は、ルーマニアのいわゆるストリートチルドレンと呼ばれる存在だった。  そこで、子供たちを束ねるリーダーをしていた所を、“エフォート”に拾われる。  エフォートとは、表向きこそバトルドローンのエリート教育施設を銘打っているが、裏では身寄りのない孤児たちを集め、人道に反する過酷な訓練を課し、落ちこぼれた物は容赦なく切り捨てる。  冷酷非道な無法組織である。  ソゾンは、そんな恵まれない生い立ち、環境に置かれ続けながらも、努力することを決して辞めない、強靭な精神力を持っていた。  挫けず、弱音を吐く事も無く、ただ真っ直ぐ突き進み、頂点に立ち続ける。  彼のその姿勢、精神力が、親を失った直後の少女に、勇気と希望を与えてくれた。 ――前世の舞翔にとってソゾンは、永遠の憧れだった。 (そうだ、私はバトルドローンが大好きで、ソゾンが大好きだった)
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