3人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっか。まぁ、合う合わないあるからね」
「うん…」
彼女は自分たちを似た者同士と言っていた。彼女も同じ苦しみを持っていたのだろうか。洸は再びマスクを着けた。
「…ところで、この前は緑色だったよね?何で今日は茶色なの?」
「気づいてくれたんだ、嬉しい!けど、理由は私にも分からないの。神様の気分次第ってとこかな」
「何だそれ。そもそも、何で自分を魂だと思うの?霊じゃなくて」
「うーん。肉体はとっくに滅んでいるのに、未だ此岸を彷徨っている。成仏できずにいる点は一緒だけど、人間の姿をしていないから、が理由かな。大きな括りで言えば、私は霊の仲間なのかもね」
「じゃあ魂って、どういう原理で浮いてるの?」
「そんなこと気にするの、あなたが初めてよ」
「俺たち似たもの同士じゃなかった?」
「あら。私、そんなこと言った?」
「言ったよ。最初に出会った時に」
「なんだ、ちゃんと覚えてくれてる」
「…あのさ。次の雨の日も、このバス停にいる?」
「いるよー。場所移動するの面倒だし」
「移動するのに大した労力使わないんじゃない?それに、さっきまでいなかったから」
「まぁ疲れはしないけどさ。ちなみに、さっきは散歩に出かけてただけ。きっと部活で遅くなるから、来てくれないかもって思ったの」
「だったら、約束してくれる?次会う時も、ここにいるって」
「あなたこそ。雨が降ったらここに来てよね」
「うん」
懐疑的だった部分が信頼へ変化していく。しかし、素直に受け取れず溢れ出た複雑な気持ちもある。肯定される安心感と、自称魂が自分の前に現れた奇妙さ。
勢いを増す雨の中、カーブミラーは洸の姿だけを映していた。
最初のコメントを投稿しよう!