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昼下りの数学の授業に船を漕ぐ生徒、あの子の香りを運ぶ風、規則正しい秒針の動き。変哲のない時間が自分と魂の間を通り、関係を断ち切ろうとしているように思えてならなかった。
もう何週間も雨が降っていない。グラウンドの土や落ち葉はカラカラに乾いている。
洸はこっそりスマートフォンで来週の天気予報を確認する。画面には晴れマークが続き、降水確率はいずれも10%か、高くて30%。
昨日もてるてる坊主を逆さまにして吊るした。雨を降らせたいのなら、逆さかにするか黒くすれば良いという記事を読み実行したが、今のところ効果は虚しく。
洸自身、彼女に依存している自覚はある。
空想上の友達の特徴として、自分の都合の良いように振る舞うことが挙げられる。魂といても嫌な思いをしなかったり、大地といる時のように話せたりできるのは自分が作り出したものだから。
何にせよ、彼女ともいつか、別れの日がやって来る。
魂だったら、突然成仏してしまい再び洸の前に現れることはないかもしれない。忘れるだけならまだいい。空想上の友達だったら、存在そのものが彼の記憶の中から消えてしまう。
洸が初めて経験した別れは、可愛がっていたペットの死。今思い出しても泣き出してしまうくらい、彼にとって非常に辛い経験となった。
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