71人が本棚に入れています
本棚に追加
盛夏の太陽が容赦なく照りつける東京の街。
アスファルトから立ち昇る熱気が空気を歪ませ、遠くの景色をぼやかせている。
そんな暑さとは無縁の地下室で、桐嶋と倉橋は深夜から朝方にかけての激しい議論の後、疲労と酒の影響で眠りこけていた。
「どうもっす!みなさんの鳴海がやってきましたよっと・・・って、酒くっさ!」
秘密基地の扉を開けた鳴海の声が、静寂を破った。
その声に驚いて目を覚ました二人の顔には、まだ酔いの残滓が見て取れる。テーブルの上には、空になったワイン、日本酒、ビール、ハイボールの瓶や缶が林立し、昨夜の激論の痕跡を如実に物語っていた。
「ほらほら起きてください二人とも!」
鳴海は折り畳み式ロードバイクを壁際に置くと、テーブルに近づいた。
大写しにした写真には、様々な書き込みがなされており、二人が徹夜で検討を重ねた形跡が見て取れる。
「おお、鳴海。よく来てくれた」
桐嶋の声には、まだ寝起きの掠れが残っていた。
「藤堂さんから大体は聞きましたけど、きちんと最初から聞かせてくださいよ。昨晩、酔って意識がなくなるまでの検討も含めてっすよ」
「わかったわかった。おい、倉橋起きろ。先にシャワー浴びてくるぞ」
「・・・了解です。お先にどぞ。おー、鳴海ぃ・・・」
倉橋の声は、まだ半分眠りの中にいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!