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電車がやや遅延していたのもあり、四ノ宮さんの家に着いたのは結局、二十一時近くになってしまった。
遅くなってすみませんと謝ると、時間はたっぷりあるんだから謝ることない、と返される。
俺に気を遣ってそう言ってくれているだけなのは分かるのに、時間はたっぷりーーと言われると、これからお泊まりなのだと改めて実感してしまって、遅刻してきた分際で、勝手にドキドキする。
「……あ。そうだ、これ……」
俺はおず、と手に持っていた紙袋を彼に差し出す。中に入っているのは、苺入りのタッパーだ。
「母からなんですけど……」
「え、ありがとう。何?」
「……苺です」
俺が気まずそうにしたからか、四ノ宮さんはハハッと笑ってくれた。
「ありがと」
「……あの、俺、食べます」
「……うん」
四ノ宮さんが、控えめな笑顔で微笑む。
文句を言われると思っていたわけじゃない。
だけど、明らかに気を遣われていて、申し訳なく思った。
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