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その後、学生のみで一部屋に集まり、山杉曰くメインタイムを過ごした俺達。
と言っても、三人部屋に十七人が集合するのはなかなか狭いため、それぞれ交代で風呂に入ったり、コンビニに買い出しに出る人もいたりと、全員が自由に部屋を行き来したりしていた。
俺はお酒はそんなに強くないけれど、せっかくなので缶チューハイを一本だけ飲んでーーふと窓の外に目を向けると夜景が凄く綺麗だったので、そのまま何となくベランダに出た。
夜景が綺麗なだけでなく、夜風も気持ち良かった。酒で熱った身体が、心地良い感触に包まれる。
すると、背後のベランダがカラカラと開いた。
振り向いて視線を向けると、そこにいたのは右手に缶ビールを持った宇枝さんだった。
「明里君、こんな所で一人でどうしたのさ〜」
明るくそう言いながら、宇枝さんが俺の隣に立つ。少しだけ酔っているようだが、ベロベロというほどではない。
「うん。夜景が綺麗だなと思って」
「確かに綺麗だねー! 綺麗と言えばさあ」
「うん?」
「明里君、最近綺麗になった」
「え?」
綺麗って?
「もしかして、好きな人でも出来たかな?」
「えっ、えっ、え……」
バ、バレてた⁉︎もしかして実は分かりやすかったの、俺⁉︎
いや、でも山杉にも惣田さんにも何も言われていないし……。
そう言えば、宇枝さんは人一倍、やけに鋭いところがある。
自分のことには大雑把で飄々としている一方で、実は周りの人のことをよく見ている。そんな人なのだ。
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