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四ノ宮さんは「悪い」と言って、くしゃっと笑った。
全然悪いと思ってない顔してる。
でも、そんな笑顔にも凄くキュンとさせられるんだ。
彼と話す度に、彼を好きな気持ちがどんどん募っていく……。
誰かを好きになる気持ちは、不安になったり切なくなったりすることもあるけれど、やっぱり幸せな気持ちで満たされる。
こんな気持ちが、ずっと続いてほしい。
その時ふと、先ほどの宇枝さんの言葉を思い出した。
『エッチはした?』
……きっと、いつかはーーと思っていた。
でも、いつかっていつだろう。
自分で決めなくてはいけないことだ。
それなら……。
「……し、四ノ宮さん」
「ん?」
俺は、彼の手をギュッと握った。思い切って指を絡めて、簡単に解けないように強く握った。
「……このまま四ノ宮さんの部屋に泊まったら、駄目ですか?」
キスだってこの前初めてしたばかりで、その先の経験は一度もないけれど……
恋人同士なら、進んでも普通、だよな……?
しかし、四ノ宮さんからの返事は……。
「駄目に決まってるだろ」
「……」
少し、ショックだった。そした、ジワジワとダメージが大きくなっていく。正直、そんなにはっきりと断られるとは思っていなかった。
それは、やっぱり俺がケーキで彼がフォークだからだろうか。
俺達の二次性別の問題は、そんな簡単に解決するものではないとは分かっているけれど……。
「だって俺、今日はあくまで引率なんだぞ」
「ん?」
「俺達が付き合ってることがバレるくらいなら別に問題ないけどさ、さすがに合宿中に部屋に連れ込んでそんなことしてたのバレたらマズいです、ハイ」
……あ、そういうこと?
ていうか四ノ宮さん、照れてる。耳が赤くなってる。
「そ、そうですよね。すみません、俺、また自分のことしか考えてなかったですね……」
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