一流のけんきゅうしゃ

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一流のけんきゅうしゃ

 「あと一回だけ、ねぇもうあと一回でいいからさぁ。」  広々としたリビングの窓には、入道雲がのわんのわんと現れて、まっ青な空とじりじりの太陽に割り込んでいた。  広々としたリビングのソファには、丁度クーラーの涼しい風のあたるところで、ごろごろと寝転がって怠惰にアイスを食べている皇帝ペンギンがいる。  「ねぇ、筆吉(ふできち)!聞いてんの?」    ソファからはみ出た筆吉の短い脚に、すがりついた。  「こんな(とろ)けそうな日に、外に行くなんてアホウのするこった。」  筆吉は、こっちを振り向きもしないで、さもうざそうにスパンと会話を切った。  でもここで引き下がるわけにはいかない。  「一生のお願い!ぼくのけんきゅうに必要なんだ!」  「お前の研究なんて知ったこっちゃない。」  「ぼくが一流のけんきゅうしゃになれなかったら、どうすんのさ?世界が滅亡するかもしれないよ。」  「お前の一生のお願いって何個あんだ?それは使用方法が間違っている。勝手に行けばいいさ。」  お願いモードは、不発に終わったようだ。  仕方がない、ぼくは実力を行使した。  「なら、アイスもうあげないから。」  ぼくは筆吉のちっこい手から、ひょいと食べかけのアイスを奪い取った。  「オイオイ…。一流の研究者は、そんなこすい事しねぇぞ!わかったから、とっとと用意しろよ。」  そういって筆吉は、アイスをぼくの手から奪還した。  よしよしと、ぼくはけんきゅうノートとか双眼鏡とか、熱中症と筆吉を冷やす対策の冷たい水がたっぷり入った水筒なんかを探検リュックに詰め込んだ。  準備万端、ぼくらは無事に家を出た。
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