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恋のキューピット
「どうしよう……別れそう」
倖が俺に泣きながら電話をしてきたのが深夜1時半。
助けてマジで、と切羽詰まった様子だった倖に「どうした?」と訊ねたのが運の尽き。
「すぐ外出てきてお前の家の前にいる」と言われてしまえば追い返すこともできなかった。
家族は普通に寝ている時間だ。近所迷惑にならないように歩いて3分の公園へ行き、何があったのかを聞いた。
大洪水の倖の顔を、ポケットから出し忘れていたらしいハンカチで拭く。
自分がやられたら絶対にキレることを親友にしてしまった。
大丈夫、バレなければ大丈夫。それにズボンと一緒に洗われてるからさ……。
「別れそう……って、彼女と? あのラブラブの愛花と? 本当に何があった?」
「う、うぅ、羽衣ぃぃぃ~!」
「あーはいはい泣けよとりあえず」
倖は俺から奪い取ったハンカチで涙を拭くと、そのままハンカチに鼻をかみやがった。……あれもしかしてポケットに入れっぱなしのハンカチだと気づかれたのか? だから嫌がらせしてるのか? そうなのか?
おい、返してくるな。そのハンカチを返してくるな。
「うぅ、うぅ、うわぁぁぁぁん!」
子どものように泣きじゃくる倖。
ハンカチを受け取るべきか迷う俺。
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