恋のキューピット

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ーー 倖が誕生日を迎えるまでに、俺はどれだけハンカチを捨てる羽目になったかは数えていない。 愛花に払わせるべきかな。 それは冗談としても、いい加減にしろと思ったのは11回や12回ではない。 痴話喧嘩に巻き込んでくるのは勘弁願いたい。 お祝い事のたびに黙ってバイトをするのは金輪際やめてもらいたいね。 「羽衣くん、黙っててくれてありがとう」 「いっそ絶交が頭を過ったくらいにはやめて欲しいサプライズランキング堂々のトップだな」 「……それはごめんって」 愛花は申し訳なさそうな顔で俺を見る。 そんな顔してると、また倖が飛びついてくるぞ。そんなかわいい顔おれ以外に見せてないで、とかなんとか。 「愛花! そんなかわいい顔おれ以外に見せないで!」 ……俺ってば倖検定1級余裕で狙えるんじゃないかな。 「倖くん、不安にさせてごめんね。誕生日おめでとう」 「これ……もしかして、プレゼント!? おれに?」 「そう。前にこのお財布欲しいって言ってたでしょ? だからプレゼントしたくて頑張った」 「もしかして、このためにバイトを……?」 「うん。デート断っちゃってごめんね」 そうだよ、お前がデートを断らなかったら、俺がこんなもどかしい思いするはずなかったのにさ。 結局惚気を見る羽目になるんだよ。俺への当てつけかってんだ。
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