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しょーもね、と言って捨てて帰りたい。
今なら薄情者にもなれる気がする。
「本当に忙しいだけかもしれないだろ。ちょっとは信じろよ」
「信じてるよばか! だって……だって、今までこんなことなかったもん!」
信じてるんだか信じてないんだか……。
本人に確かめればいいのに。それを言い合えない仲でもないだろう。
「しばらく忙しいから、帰りも別々ねって!」
「今までも別々だったろ。家反対方向じゃんか」
「駅まで送ってたもん!」
……マジかよ。
俺は本当に何を聞かされてるんだろう。
やっぱり惚気か? 俺はまた青春するこいつらに醜く嫉妬してなきゃならんのか?
俺だって恋してぇよ!
倖はズビッと鼻をすすり、何を血迷ったか俺の服の裾を掴んでごしごしと涙を拭いた。
……帰ったら風呂入って着替えよ。
「なぁ羽衣。俺、振られるのかな? もう愛花は俺のこと好きじゃないのかな? どうしよぉぉぉお嫌だぁぁあ」
「本人に訊けよもう……」
「訊いたけど教えてくれなかったぁぁぁああ!」
訊いたのかよ。
俺は心の中で愛花に呼びかける。
愛花、面倒だからもう何も隠さずこいつにすべてを話せよ、何を隠してるのか知らんが。
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