恋のキューピット

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ーー「訊けとは言われてない。ただ、最近忙しそうだなと思って。デート、断ったらしいじゃん」 大人な俺は醜い嫉妬をひた隠してサラッと質問を投げかける。 すぐに既読が付き、メッセージが返ってきた。 ーー「言っとくけど、浮気なんてしてないから。私が好きなのは倖くんだけだから」 惚気かよ! リア充め! もしも対面で話を聞いていたら、醜い嫉妬が顔に出てきてしまったかもしれない返答だった。 ーー「あっそ。じゃ、なんで断ったんだ?」 ーー「……バイト」 愛花がバイト? 倖とのデートよりも大事……あーはいはい。分かりましたよ。 世のカップルを羨み、恋愛小説を読み漁った俺にはお見通しですよ。 来月は倖の誕生日だ。そのプレゼントを買うお金を貯めてるってわけだな、そうだろ。 ーー「ふーん。なんでもいいけど、それ倖に言わないのか?」 ーー「言えるわけないでしょ。ってか今からバイトだから準備しなきゃ」 今日もバイトですか。だからこんな朝早くにメッセージが来たわけね。 恋人がいるというのも大変だな。 俺はフリーだからこんなにも自堕落な土曜日を過ごせるんだ。羨ましいだろ。 ーー「あ、倖くんにバイトのこと言わないでね!」 ーー「なんで」 ーー「なんでも! 言ったら絶交」 むしろ絶交しない? この先も2人の惚気とか聞きたくない。 睡眠不足のせいもあってか、俺のメンタルはジェットコースター並みに浮き沈みが激しかった。
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