恋のキューピット

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さて、倖には何と言ったものかな。 来月を楽しみにしとけっていうのもアウトだろうし、バイトしてるってさと告げ口するのも愛花に対して無慈悲すぎるか。 浮気なんてしてないらしいと言うのもなぁ。 俺は寝不足の頭で考える。 だけど一向にいい案が浮かばない。 そうこうしている間に睡魔が襲ってきた。 ーー 「はっ! 寝ちゃった!」 目が覚めた俺は勢いよく体を起こす。 今日からゲームのイベントが始まるというのに、俺ってばうっかり11時半まで寝てしまった。 12時スタートだからまだいいか、と思いながら手に持ったままだったスマホの画面を付けた。 「あぁ、そうだった」 愛花とのメッセージのやりとりがそのまま残っている画面を見て、夜中の出来事を思い出した。 あの倖、動画にでも撮っておけばよかったな。ぜひとも愛花に見せたかった。 どれだけ2人がお互いを想い合っていることを知っていても、俺はそれをそのまま届けることはできない。 倖だって彼女にあんな泣き姿を見せたくないだろうし、愛花にも口止めされた。 それでも2人の想いを勝手に伝えたなら、俺は裏切り者扱いされそうだ。 そのストレートな言葉を、俺はとっと2人のポストに届けてこの件からフェードアウトしたいというのに。 あぁ、もう、じれったい。
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