恋のキューピット

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ーー「愛花のことなら心配いらないって。そのうち本人からちゃんと言ってくるって」 無難な文章を打ち込んで送信すれば、速攻で既読が付いた。 ーー「別れ話ってこと!?」 ダメだこれは。完全にネガティブモードに入っている。 俺としてはさっさと「お前の誕生日プレゼントのためにバイトしてんだよ!」と教えたいところだが、胸にしまっていないと愛花に絶交されるだろう。 絶交したいなんて、本心じゃないんだから。いやに決まっている。 俺は2人の結婚式を見届けて、すっぱりと2人の惚気から解放されるのが夢なんだから。 ……それまでに俺が恋人を作れたらそのあとも関係を持ってやってもいい。 とにもかくにも、そのあたりの夢を叶えるためには、俺は今は恋のキューピット役に徹するしかない。 ーー「別れ話じゃねぇから。好きな人だけ信じてろって」 ーー「羽衣……好き」 ーー「はいはい。愛花の打ち間違えだな」 ーー「羽衣も好き!」 普段の愛花との距離感にやられて、友人との距離感のバグって来たらしい。 どれだけ褒めても何も出ないぞ。 強いて言えばあの顔面が大洪水になるまで泣いたことを愛花に黙っていてやるくらいだ。 まったく、俺もこいつらに甘いな。
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