第二話 殺人

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 ハッとして目を覚ます。  真冬はベッドに横たわっていた。  あたりを見渡す。  颯真と沙友理は同じベッドで眠っている。  湊は床で大の字になっていた。 「……?」  颯真のいびきが響く部屋で、真冬は戸惑う。 (私、酔っ払った……?)  ずきん、と頭痛が走る。  ポケットを探ってスマホを取り出す。  時間は午前五時。  いつ眠ったのか、記憶がなかった。  頭がぼんやりしていて、眠気が差している。  真冬は戸惑いながらもベッドから下りて、湊を起こした。 「湊くん」 「……うん? もう、朝ですか?」  床で眠っていたぐらいだから酔い潰れたのだろうが――湊は割合、あっさり起きた。 「まだ五時だけどね。私たち、自分の部屋に帰ろう」 「はい……そう、ですね」  湊は起き上がり、颯真と沙友理を見やる。 「部長と沙友理さんは寝かせておこう」  真冬の提案にうなずき、湊は立ち上がった。  真冬と湊は、それぞれの部屋に戻った。  真冬は着替えて、ベッドに潜り込む。  シャワーを浴びる気力はなかった。  それから、どのぐらい眠っただろう。  着信音で目を覚ました。  スマホが鳴っている。夏美からのライン通話だ。  海外ではデータ通信や通話が高くなるので、スマホはWiーFiがつながるところでだけ、ネットの機能を利用している。  ラインはWiーFiさえあれば通話もできるのが便利である。 「――はい」  真冬は寝ぼけた声で応じる。 『真冬? あんた、大丈夫? みんな無事?』  夏美の心配そうな声で、少し目が覚める。 「へ?」 『もしかして、なにも聞いてない? もう九時よ? 起きたばかりだったりする?』  真冬は愕然として、テレビをつけた。  右上に、午前九時二十二分という表示が出る。  しかし時刻よりも、驚くべきものがテレビに映っていた。  【月の集落】の周りを警察官が取り囲み、リポーターが真剣な面もちでしゃべっている。 『【月の集落】のチャックモールで、遺体が発見された。警察は殺人事件と見ている』  そんなテロップを目にして、息を呑む。 「な、夏美ちゃん。今、テレビをつけたんだけど……ニュースで……」 『うん。今、やってるでしょ。さっきリカルドから電話があったの。どうも殺されたのは観光客らしいって……。リカルドは心配してホテルに駆けつけようとしたんだけど、ホテルも封鎖されていて入れなかったって』  それで、夏美がライン通話を……と納得したところで、血の気が引く。 「まさか、夏美ちゃん」 『リカルドが警官から少し話を聞いてくれたの。どうも、そのホテル――ホテル・ロハの宿泊客が犠牲者らしいの』
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