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駅前の喫茶店に到着するなり、ボックス席に座った2人は、とりあえずメニューに目を通し店員を呼ぶと、若い女性の店員がやって来た。
「はい、お待たせしました。」
「えーと、私はアイスコーヒーを。」
夏恋はメニューを指差しながら注文した。
「はい、アイスコーヒーですね。」
店員は恐神の方を見ると、恐神はずっとメニューとにらめっこをしていた。
「あ、あの…恐神さん?」
「店員さん、この贅沢プリンア・ラ・モードと、季節限定のさくらんぼジャンボパフェはどちらがオススメですか?」
「はい?あ、え~と…。」
店員は困った表情を浮かべながら答えを考えていたため、夏恋は苦笑いしながらさくらんぼジャンボパフェを指差した。
「恐神さん!ここは季節限定ですよ!今しか食べられない限定なんですから。」
「ふむ、なるほど。では、毒島さんの案に乗っかりましょう。さくらんぼジャンボパフェでお願いします。」
「は、はい、畏まりました。」
店員は夏恋にペコッと頭を下げてその場から離れていった。
「恐神さん、あの店員さん、名札に初心者マーク付けてたの見ました?」
「…いえ、全く気にしませんでした。」
「恐神さんって、観察力に長けてるのかどうかちょっと分からなくなりました。」
「すみません、でも甘い物とは真剣に向き合いたいんです。パフェとプリンですよ、迷うに決まってるじゃないですか。」
真っ直ぐ見つめられながら真面目なトーンで話す恐神に、夏恋は若干引いた。
「…甘い物好きなのはよく分かりました。」
「そんなことよりも本題に入りましょう。」
恐神は、髑髏があしらわれた派手なケースのスマホを取り出した。夏恋は気になったが今は髑髏について聞くことを我慢した。
「この画像見てください。」
それは暗闇で何かが青白く発光している画像だった。
「何ですか、これ。」
「血液のルミノール反応ですよ。ルミノールのアルカリ性溶液を過酸化水素水とともにスプレーに入れて血液に噴霧するとこうやって光るんです。」
恐神は小さなスプレーボトルを指で摘みながら見せた。
「これはトイレ内の便器と洗面台、次の画像はドアノブです。どれにも血液が付着していた跡があるということです。」
「…恐神さんは、この血液は何だと思うんですか?」
夏恋は内心、恐神の言いたいことを理解しながらも自分から言うのが恐く感じて質問をした。
「推測ですが、流美さんのものではないかと。」
「…じゃあ流美は今何処に?」
「恐らくあの家の何処かにいるはずです。一旦引いたと安心させて、この後再び家に伺いましょう。」
「…流美は生きてますか?」
「それは…」
「お待たせしました。季節限定さくらんぼジャンボパフェとアイスコーヒーです。」
恐神は、言葉の途中でパフェに釘付けになり、目を輝かせた。
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