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サラサラの銀髪に青い瞳、スラリとした体型でスーツがビシッと決まっている恐神を見て、夏恋は顔を赤くして固まった。
「どうかなさいましたか?」
冬子が無表情で問い掛けると、夏恋は我に返り、慌ててソファに腰掛けた。
「粗茶ですが。」
夏恋が座ると同時に冬子は手際よく、2人の前にお茶を出した。夏恋はペコリと頭を下げ、冬子を改めて見ると黒い長髪で、秘書としてスーツ姿が似合う女性であり、思わず見入ってしまった。
夏恋は背が低く子どもっぽい見た目がコンプレックスであり、冬子と目が合うと少しうつ向いた。
「…毒島さん?」
「あ、す、すみません。」
「ははは、随分とご緊張されてるようだ。どうぞ、お茶を飲んで落ち着いてください。鬼塚が仕入れている特選ジャスミン茶です。リラックス効果もありますから。」
夏恋は恐神に進められるがまま、お茶を一口飲み気持ちを落ち着かせた。
「どうですか?」
「は、はい、ちょっと落ち着きました。私、こういう所初めてでして。」
「ははは、まだお若いですから初めてで当然ですよ。では、早速ご依頼内容の確認から。」
恐神がパチンッと指を鳴らすと、冬子はサッとタブレット端末を手渡した。タブレット端末にも髑髏のシールが貼られていて異様にキラキラしていた。恐神はタブレット画面を見ながら話を始めた。
「えー、申込フォーム内容を確認しますと、毒島夏恋さん、失礼ですがご年齢は20歳。」
恐神がチラリと夏恋を見ると、夏恋は目を逸らした。
「よく中学生と勘違いされるんですが、間違いなく20歳です。」
夏恋は財布から運転免許証を取り出し、恐神に渡した。
「お名前のとおり可憐な女性です。」
恐神は運転免許証を返した。恐神の言葉に夏恋は顔を真っ赤にし、免許証を財布に戻した。
「それで、肝心のご依頼内容ですが、親友を捜して欲しいということですが、詳細を伺えますか?」
恐神はタブレット端末に附属しているタッチペンを取り出し、メモを取る準備をした。
「はい。私は生まれは日本ですけど、小学生の時に海外移住して、また3年前に日本に戻ってきたんです。その時からずっと仲良くしている親友の天野流美が2日前から行方不明で。スマホにラインしても既読にならないし、電話は電波が届かない場所にいるというメッセージが流れて繋がらなくて…。」
「警察には?」
「実家住まいでお父さんが捜索願を出しました。流美の家は父子家庭で、さらに一人娘なんでお父さんは凄く泣いていました。」
「ふむ。警察はどんな反応でした?」
「それが…家出じゃないかって。だから余り本気で捜査をしてくれてる感じがしなくて…。」
夏恋は目を潤わせながら言った。すると、冬子はサッとティッシュの箱をテーブルに置いた。
「す、すみません。」
夏恋はティッシュを数枚取ると涙を拭った。
「では、行きましょう。」
恐神はそう言ってソファから立ち上がった。
「え?行くって何処にですか?」
「勿論、天野さんのお宅ですよ。」
恐神はニヤリと笑いながら答えると、指をパチンッと鳴らし、冬子から鞄と帽子を受け取ると部屋から出ていった。
「…行動早っ!!」
呆気に取られていた夏恋は慌てて恐神を追い掛けた。
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