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「こちらです。」
父親に案内され2階の流美の部屋の扉が開けられ、恐神たちは中に入った。14畳ほどの広さがある部屋は、綺麗に整えられておりパッと見、特に違和感は感じなかった。
「さっきの紙はこの机の上にありました。」
机の上にはデスクトップ型のパソコンと、その横にコンパクトプリンターが置かれていた。
「なるほど。ちなみにですが、お父様はこのパソコンは使用されることはありますか?」
「いえ、私は機械音痴でして。それにそんなことをしたら娘に怒られます。」
「ちなみに、仮に娘さんが家出だとしたら行き先の候補は何かありますか?」
恐神の問い掛けに、父親は少し考えてから答えた。
「…母親の所の可能性はあります。私は流美が小学生の時に離婚しまして、親権は私が貰い育ててきました。私は離婚してから一度も妻と接触していませんが、流美は中学生でスマホを買ってから妻と連絡を取っているようでして。」
「今のおっしゃり方から推測するに、お父様はご離婚された奥様の居場所はご存知なさそうですね。」
父親は頷いた。
「もう少し、娘さんの部屋を見せていただいても?」
「構いませんよ。私はキッチンの片付けの途中でしたので一旦戻りますからご自由にどうぞ。…流美は私の一人娘です。あの子のために私は生きていると言っても過言ではありません。どうか、よろしくお願いします。」
父親は頭を深く下げてから部屋を出ていった。恐神は父親が階段を下り始めた音を聞き、扉を閉めた。
「恐神さん、これからどうするんですか?」
「毒島さんは日記は書かれていますか?」
「え、はい。でも毎日欠かさずかと言われると自信が無いですけど。」
「毒島さんは、この部屋に流美さんの日記が無いか探してください。私は家の中を見てきます。」
「え?」
恐神はゆっくりと扉を開けた。夏恋は慌てて恐神に駆け寄り小さな声で指摘した。
「勝手なことしたら怒られますよ。」
「リスクを冒さなければ真実は求めることは出来ません。特に凶悪な事件はね。」
「…凶悪な事件って。家出じゃないんですか!?」
「まだ確証はありませんが、流美さんのために最善を尽くしたい。よろしいですね?」
恐神の真っ直ぐな眼を見て、夏恋は掴んでいた恐神の腕から手を離した。恐神はニコッと微笑むと、静かに部屋から出ていった。
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