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01
良く在り来りな話。
クラスに一人はいる裕福な家庭に暮らす男子が、
ちょっと劣って貧乏な女子に惚れる展開。
私達の場合は、正にそれだった。
小学生の頃から一緒の学校に居て、幼馴染みまでは行かない只のクラスメート。
学校で挨拶程度に会話して、どちらも男子と女子のグループの中に居て、そこそこお互いを意識するぐらい。
其れでも思春期を経験して、男女を意識し始めて…
私は先輩を好きになって、呆気無く振られたところに、その男子が居たから泣き泣き愚痴ったら…
それとなく慰められた時もあった。
頭脳も運動神経も良くて、かなりモテる彼も…
彼女が度々変わっていたのを知ってる。
それも何故か、フラれたパターンが多くて、
その度に、笑って慰めたこともある。
そんな中学生を卒業した頃、
一頭の黒い犬が事故をしたのを見かけて、私は家に連れ帰って、お父さんにお願いをして病院に連れていって貰って、治療をして…
その後は家に連れて帰って療養してた。
2ヶ月ぐらい一緒に過ごしてた犬が元気になった頃、
その子の飼い主さんが迎えに来て、犬を連れて帰ってしまったけれど、偶々その犬が…
中学生の頃までは、よく話してた男子の実家で飼ってた犬だったそう。
" 脱走して探してたから助かった。治療してくれてありがとうな。優しいお前に惚れ直した。卒業したら俺と結婚してくれ "
なんで犬を助けただけで、その男子と結婚しなきゃいけないのか分からなかったけど…。
高校3年間猛アピールとアタックされ続けて、折れたんだよね。
釣り合わないから嫌だと言ってたんだけど、
其れでもいいと言われ続け、後々離婚をするだろうって覚悟で結婚したけど…。
私的には盛大な結婚式を行ってくれて、
夢にまで見たキッチンが広々としたマイホームや
自動車免許だって取らせてくれた。
専業主婦でいいと言って、仕事もしないまま家にいるのに、彼は家事を進んでしてくれる。
仕事も家の跡を継ぐ為に、大手企業の会社で働いてて、
完璧で尚且つイケメンで優しい。
寧ろ、私がダメダメぐらいなのに…
彼は学生の頃からずっと変わらない愛情を向けてくれてるんだ。
「 ん………… 」
いつもの時間に目を覚ました。
夢の中で、学生の頃に世話をした犬が出てきた…。
そんなふわふわでもふもふに包まれた夢だったけど、現実はもっと甘い空気に包まれる。
「 起きたか?おはよう、ハニー 」
身を動かせば、先にお目覚めだったらしい愛しい夫の声が聞こえてきて、目を擦りながら左を向けば、シルクのシーツに包まれた掛布団を腰に掛けた程度の全裸の彼の姿が目に映る。
「 あ……。お、はよう…… 」
いい夢は見たけど…
寝る前はもっと良い事をしてくれた事を思い出す。
だからちょっと恥ずかしくなって、枕へと顔を擦り付ければ、彼は小さく笑って身を寄せては頬から横髪に触れながら頭部へと口付けを落とした。
「 昨日も、凄く可愛かったが…今だに慣れない様子も、可愛いな 」
「 うぅ…… 」
彼との初体験は高校2年生だけど、それでも…
めっちゃかっこいいイケメンとヤるのは何度経験してもなれないもの。
付き合って4年、結婚して3年だけど…。
本当に…夜だけなれない。
「 ほら、ハニー。俺に可愛い顔を見せてくれ 」
幾度と頭部を撫でた手は、そっと誘うように頬をなぞる。
ゆっくりとそれに合わせて視線を向けると、セピア色の瞳が、寝起きの私を写す。
「 ふ、可愛い…… 」
手の甲側の指で、乱れた髪を整えるように横髪を耳に掛ける仕草をする彼は、羨ましい程に長い睫毛を持ち、厚みのある唇や鼻筋の通った彫りの深い顔立ちをしている。
肌荒れなんて知らないぐらいの毛穴もないようなツルツルの肌。
なんて羨ましいんだ……。
「 あーもう、ムリ。ベイビーに可愛いって言われると、心臓がいくつあっても足りない! 」
恥じらいから逃げるように、その場で向きを変えて、なんとか起き上がればクシャッと長い髪を掻き乱してから、何気無く彼の方へと視線を落とす。
「 ふっ…そうか。ハニーが死んでは寂しいから、言うのは控えよう 」
「 そうしてください 」
モデルか!ってツッコミたい程に完璧な容姿なのに…、ゲロ甘過ぎる…。
態とらしくそっぽを向いていれば、私の長い後ろ髪を指先で弄ってた彼は、鳴り始めた目覚ましによって動く。
「 朝か…… 」
「 もう明るいもんね。今日は何時に帰って来れそう? 」
この時計が鳴るって事は、6時半になったのだろう。
いつも聞くような問い掛けをすれば、ヘッドボードの上に置いていたスマホを手にした彼は、
目覚ましを止めてから、私の腰へと抱き着いてきた。
「 出来るだけ早く終えるが…19時に会議ある。それが長引けば…21時以降になるかも知れない…。遅くなりそうなら連絡する 」
「 うん、分かった。いつもご苦労様 」
腰に抱き着いてきたから、チャンスとばかりに頭部に手を当て撫でようとすれば、顔を上げた彼にその手首は掴まれ、止められた。
「 っ!! 」
残念って思った時には、ベッドに押し倒されていて、彼が被さるように見下げて来た。
「 埋め合わせはする。何か希望はあるか? 」
「 んー……近々4年目の結婚記念日って知ってる? 」
「 嗚呼、8月10日。ハートの日な。勿論覚えてる。その日は休みを入れてる 」
ハートなんて語呂合わせは、彼が言ったからその日にしただけで…。
私的には、二次元の推しの誕生日って以外は気にしたことはなかった。
細かな記念日すらちゃんと覚えてる彼に、少し考える素振りを見せてから、視線を向ける。
「 じゃ…犬が欲しい 」
「 …………犬…? 」
「 そう!もっふもっふの大きな犬がいいな。犬種は気にしないから、保護犬でも何でも… 」
「 …犬はダメだ。俺は犬アレルギーなんだ 」
「 うそつけ…!そんなことないくせに、ちょっ…! 」
犬が欲しい。その話をするといつも誤魔化される。
犬アレルギーじゃないことぐらい知ってる。
いやいや柴犬カフェに連れて行った時に、めっちゃムスッとしながらも2時間耐えてくれたし、私が散歩中の犬と遊んだ後でもくしゃみとかはしなかった。
臭いって言われて…お風呂には即入らされたけど…。
だから彼がアレルギー持ちでないのは知ってるから、犬が欲しいと思ってたのに…。
胸へと触れてきた手は腰をなぞり上げた。
「 代わりに1時間だけ、俺と遊ぼう 」
「 ダーリンがヤりたいだけでしょ、あ、もう…! 」
腰へと下がっていた手は胸へと移動し、優しく触れながら口付けを落として来た事に、文句を言いながら諦めた。
セックス頻度は、付き合ってから余り変わらない。
よっぽど彼が疲れてたり、私が生理になった日以外は、ほぼ毎日の様に行われる。
朝だけだったり、夜だったり…
其の2回だったり…。
だから慣れてない…はずはないんだけど…。
その辺りは…仕方ないと思う。
「 っ、ぁ、あっ……!ぁ、んぁ…! 」
「 はぁっ…。ハニー…可愛い……愛してる 」
質量のある大きな熱源が、奥を突き上げる感覚に内部をきゅっと締め付ければ、彼は密かに眉を寄せ笑みを零す。
「 ふ、はっ……ナカで、果てたい…。いいか? 」
「 ぅ、うん……きて、ぁ、アッ…! 」
「 は、ッ…… 」
弾力性の高いベッドで、尚更奥へと突かれる感覚が諸に分かれば、彼の腕を掴みながら腰を反り上げると、その欲を奥へと注がれる。
夜も沢山したのに…。
変わらない量が、含まれる感覚が地味にわかって、同時に果てた私は小刻みに震えては、息を切らす。
そして、優しく口付けを落とされた後に強く抱き締めてくるのはいつものこと。
奥へと注ぐように少しの間停止してる彼は、
まるで種付けしてるように思える。
「 一緒にお風呂に入ろう。その後はハニーが大好物の蜂蜜たっぷりかかったパンケーキでも焼くよ 」
「 後で…お風呂はいる…。流石に無理……でも、歯磨きしたいから、気合い入れる 」
「 ん、手伝うよ 」
夫が絶倫なのも困る……。
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