〇同・外

1/1
前へ
/10ページ
次へ

〇同・外

黒煙が出ている二階の一室。 そこに消防車から水が撒かれている。 沢山の野次馬がロープの張られた外からそれを眺めている。 その中に紛れて立っている、ナース服の楓とロンパースの堀。 二人とも裸足。 楓はがらがらを片手に持っている。 二人の服は煙で煤け、その奇妙な姿が野次馬にじろじろ見られている。 堀「財布も服も、全部中だ。車も取りに行けない」 楓「命あってのものだね。私はラッキーだと思った。秀君に助けられた」 堀「全部ばれる。会社にも、家にも」 楓「心配?私達、ここで一度死んだんだよ。生まれ変わった。私はこれからの覚悟ができたよ」 堀「あ」 楓「秀君はどうかなあ?これからの人生、私と生きる覚悟はありますか?」 堀「はい!」 楓の手に持ったがらがらが、「カランコロン」と涼しい音を立てている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加