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――マジで、拒否権がねえ。
そして今。
朝葉は屈強な男性に腕を引かれて、魔王の御前に連れてこられたところだった。
さっき鏡のあるところを通ったので、今の自分の容姿はわかっている。長い金髪、緑色の瞳、小さな角。いかにも白人のお姫様っぽい姿をした――三歳くさいの、幼女。まさか、転生先が幼女になろうとは。
しかもこの姿のキャラには、一切見覚えがない。本当にオリキャラじゃん、とげんなりする。否、原作にあったキャラに転生して成り代わり、その人格を乗っ取るのはもっと嫌だったが。
「あまりきょろきょろするな」
朝葉の腕を引く男性が、困ったように言う。
「我々のリーダー、魔王様の御前だ。無礼がないようにしろ、いいな、アサハ」
「あ、なまえ、ぜんせそのまんまなのね……わかりやす」
「何か言ったか?」
「い、いーえ、なにも!」
これはあれか、お淑やかにしなきゃ駄目なやつか。既に終わってる気がするう、と朝葉は遠い目をした。
自慢じゃないが、お嬢様とかお姫様とか、自分から一番程遠いキャラなのだが。
――なるほど。子供がたくさん、ってのはそういうことか。
周囲には、朝葉以外にも、大人に手をひかれた子供達が存在している。全員魔族の証拠である小さな角が生えていた。恐らく、彼等はみんな魔族の孤児か何かなのだろう。女神様も、朝葉のことを“養女の一人”といっていた。ここにいる子供達みんな、魔王の子供として引き取られたということか。
つまり全員、何らかの事情で親を失った子供達ということになるのだが。
「静粛に」
低く、どっしりとした声が響いた。大人達がいっせいに膝まづく。慌てて朝葉もそれにならった。赤い絨毯が敷かれた階段。その一番上の玉座に、屈強な肉体を鎧で纏った銀髪の男がどっしりと座る。
銀髪に、ルビーのような瞳。間違いない、自分がラノベの表紙やアニメで見た――魔王・コンラッドだ。
「皆の者、よく来てくれた。孤児院の者達も、よくここに子供達を連れてきてくれたな」
「は、光栄でございます、魔王様」
コンラッドの言葉に、魔族の男達がかしこまって答える。やっぱり威圧感が半端ない。そんでもってかっこいい。ああいうマッチョ憧れるんだよなあ、と斜め上の感想を抱く朝葉である。
鎧で分かりづらいが、あの大胸筋のむちむちぶり。がっしりと太い首。実にタマラン!思わず目を輝かせてしまう。
華奢で少女のように麗しい美少年や美青年も好きだが、一人の女としてはやっぱり男らしくてかっちょいいマッチョにも惹かれてしまうのだ。
「皆を此処に招いた理由は、既に聞いていると思う。お前たちを、我が養子に迎え入れるためよ」
彼は子供達を見回し、それから椅子の隣に立っていた一人の小さな少年を引き寄せた。
魔王と打って変わって、まだ少女のようにあどけなく細い、天使のような銀髪青眼の美少年。間違いない、彼が物語のもう一人の主人公、魔王の息子であるジーンだ。
「我は、お前たちにこの子の兄弟となって欲しいと願っている。そして……いずれは皆一丸となって、この子を、そして魔族を支えてほしいのだ」
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