<2・喧嘩。>

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 なんなら、二次創作でもそういう話がもりもりに書かれていた覚えがある。BL的な意味でなくても、二人の関係性に胸が熱くなった読者が多かったためだ。しかも、物語の過程では勇者陣営も魔王陣営もばかすかとネームドキャラが死んでいくのである。そりゃもう、ものすごい存在感を出したほぼメインのキャラさえ容赦なく死ぬ。残酷に死ぬ。作者は人の心がないんか!?なんてツッコミがなされたほどである。  そんな朝葉は、レンとジーンの双方が推しだった。  夢小説は苦手だが、それ以外の“二人を救済するルート”の二次創作は結構読み漁ったし、なんならBL系やGL系、男女CPの話も山のように読んでいた。あたしの想像の中では二人は永遠に幸せに生き続けてんだこんちくしょー!とかTwitterで叫んだ記憶もある。  だからそう、何か別の存在が、力が、彼等のハッピーエンドを望んでもなんらおかしくはないし、朝葉としても心の底から同意するところではあるのだが。 ――誰だよ。魔王の養子を山ほど増やそうなんて設定改変した馬鹿は。  はあああ、と朝葉は部屋どドアを開けて、深々とため息をついたのだった。  自分がこの世界に来て、一週間が過ぎた。  朝葉は現在三歳。集められた子供達は、三歳から八歳までの範囲で何人も存在していた(ちなみに、ジーンは今四歳くらいだったはずである)。ジーン以外はみんな魔族の孤児。人間界の片隅、辺境の土地においやられた魔族は人間達から根強い迫害を受け続けている。その結果、小さな小競り合いはたくさん起きており、人間達に魔族が殺されるような事件も後を絶たないのだった。  もちろん、それ以外の要因で親は死んだ子や、親に捨てられた子もいるのだが。  確かなことは、子供達がみんな真っ当な愛を知らずに生きてきた存在だということ。そして、誰も彼も少なからず拗れているということだった。現在、部屋の中は子供達が泣く声と怒鳴る声でいっぱいの状態。理由は、男の子たちと女の子たちで、真っ二つに分かれて大げんかに発展してしまったためであるようだ。  さっきから泣いている女の子と泣きそうな男の子たちで、お前悪いそっちが悪いと指をさして言い合っている。このままでは殴り合いの喧嘩に発展するのも時間の問題だろう。  そして、部屋の隅でジーンが醒めた目でそれを傍観している、という図。朝葉がちょっとトイレに立った間にこんな状態になってしまっていた。 ――そりゃ、一室に集めたらこうなるのわかってんじゃねえか。魔王軍も、そのへん配慮足りてないよなあ。  恐らく。
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