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玲は不思議そうな顔をして素直に話す。聞かされていた翔の内心は動揺しまくりだった。玲が言うには、自分の周りの人間が急に近くなったという話。本人は全然わかっていないが、翔は察する。みんなが玲に対して勝負を仕掛けてきたことを。
それぞれが想いを届けたくて、でも相手が鈍感すぎる玲だから上手く伝わらない。
翔は焦った。このままだと玲にいつか誰かの想いが届いてしまう。そうしたら、自分はどうなる?これまで必死に隠してきたのに?絶対に沼らないようにギリギリを保ってきたのに。
……そんなことを考えている時点でもうどっぷりと玲にハマっているのだとそれに気づいた翔はハッとする。
もうこんなにも想っているのだから、手遅れなのだと。
だから、翔は覚悟を決めた。沼りたくなかった、でももう堕ちてしまった。ならば、することは一つ。
ーー届けたいこの想い。けれど、鈍感な君に届くかな?
翔はクスリと笑ってしまう。きっとわからないだろうなと玲の様子を想像して。それでも、届けたいから……この想いを伝えつづけると心に決めて。
「玲ちゃーん」
「なんだ?」
目の前の玲の顔を見つめて、翔は名を呼ぶ。甘いマスクをと声色で、とびっきりの想いを込めて、口にする。
「好きだよ」
「は?」
可愛いは何度も言われたが、好きなんて直接的な告白は初めての玲は素っ頓狂な声を上げて固まった。それを見て翔は思わず吹いてしまう。少し間抜けな顔も可愛いよねと翔が言うもんだから、揶揄われてると思った玲は顔を真っ赤にして怒る。それを見て翔は懲りずにまた、笑って好きと言った。
ーーそしたら、俺のこと、ずっと見てくれるでしょ?
翔は愛おしそうに玲を見つめて、笑った。届けたい想いをしっかりと言葉にして、今度は置き去りにせず。自分の言動でこちらを見てくれる玲に、ただただ幸せを感じていた。
Fin
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