いつのまにか底なし沼

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 ゴミでも見るかのような玲の態度に男達も不服そうにして一触即発な雰囲気になるが、ここで今まで見ていただけの翔がすーっと前にでてきて「いやいや」と笑顔で間に入った。 「女の子の手を許可なく触っちゃダメでしょ」 「あ?お前誰?」 「関係ねーじゃん」 「それが関係あるんだな、これが。……この子、実はうちのボスのお気に入り。だから下手に手を出さない方がいいよー?」 「うっざ。ボスってだれだよ」 「え?ここらを仕切ってるチームのボス……って言えば、わかる?」  翔が小声でそう言うと男たちは顔を見合わせる。すると、あっさりと身を引いて、翔達から離れて行った。 「ねえ玲ちゃん。あんまり目立つことしちゃダメじゃない?」 「うるさい。絡まれたんだから仕方ないだろ」  男達が去って行くのを見送ると、翔は呆れたように玲に言った。そんな翔に玲は唇を尖らせる。確かに自分の行動は軽率だったかもしれないが、売られた喧嘩は買う主義だ。  そんな玲の様子に相変わらずだなぁと笑みをこぼして、翔はふと思いついたように口にした。 「ねえ玲ちゃん。俺があいつらなら……なんて言ってたのかなーって思っちゃったり?するんだけど」 「は?翔に?可愛いってやつ?そんなのいつも言われてるから、特に反応しないけど」 「えーつまんなーい。喜ぶも嫌がるもないならもう無関心と同じじゃん。ひどっ、俺の心はブレイクだよ」  そんな風に冗談で返す翔。玲はまた呆れて肩をすくめた。 「ほら、そーいうところ。おまえの言葉にまともに取り合うとかアホすぎる」 「えー本心なのに。俺は玲ちゃんのこと可愛いって思ってるよ」 「……そういうの、いいから。じゃあな」  そしていつもと同じようなやり取りに玲はもう聞き飽きたと言わんばかりに、適当な返事で返すとさっさと歩いて行ってしまった。
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