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「泣けるもんなら是非泣いてみてくれ」
ハッと鼻で笑い玲は翔をあしらう。そんな玲に翔は「もう」と口を尖らせるが、すぐに笑顔になって「でもさ」と続ける。
「玲ちゃんって本当可愛いよね。その性格もだけど……見た目とか仕草も全部可愛い」
「……またそれかよ」
翔の褒め言葉攻撃に玲は呆れて溜息をつく。しかし、それでも翔は続けた。
「だって本当のことだし?俺はね、玲ちゃんのそういうとこいいと思うよ?」
「私はおまえのそーいう軽はずみな言動はどうかと思うけどな」
「あれ?愛の重さがたりない?」
「ほんと、懲りないな」
はぁと大きなため息を一つ吐いて、玲は翔を見る。その目はいつになく真剣で、翔は思わず息を呑んだ。
「翔、おまえは結構適当な感じもするけど、助けてもらってるところとかあるし……だから感謝もしてる」
「えー?なになに、急に?これドッキリ?」
玲の予想外の言葉に翔は本心を隠すように、軽口をたたく。そんな態度に玲は少し顔を顰めると、翔の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「なっ、なに?玲ちゃん」
突然のことに動揺を隠せない翔に玲は顔を近づけると、彼の耳元へ唇を近づけて囁いた。
「……おまえのそういうとこが好きじゃない」
そう言い終わるとすぐに手を離し、玲はいつも通りの表情になって何事もなかったように振る舞うのだった。そんな玲の言葉に呆然とする翔を残して。
ーー嫌いなら早く言ってよ、玲ちゃん。先伸ばしにするから、期待しちゃうんだよ。
翔はぐっと言葉を飲み込んで、笑身を浮かべて玲に話しかける。
「玲ちゃん怒ったー?」
「別に?ただ、おまえの軽さはどうしようもないなと改めて思っただけ」
そういつものように淡々と返す玲。翔のことはどんな性格なのか、なんとなくは理解している。だからこそ、玲は翔の行動ではなく“言葉”を信じてない節がある。
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