紙飛行機飛んで

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紙飛行機飛んで

「ほら帰るぞ」 「もう待ってよーー」  駿太の背中がずんずんと進んでいく。それを追いかけるように私も早足で歩く。駿太の速度はすぐに遅くなる。 「後ろより横に来いよ。美奈」  うんと頷いて並んで歩く。中学に入ってから駿太の背は伸びて、目線を合わせるには背伸びしなければならない。いつか。きっといつか。私からか駿太からかは分からないけど、どちらかが告白をして幼馴染みから恋人に昇格するんだ。駿太もそう思っているはず。ただそれがいつなのか私には想像がつかないんだ。  駿太は私の家の少し前で立ち止まり私に向けて手を振る。 「じゃあな」 「今日も家まで来てくれないの?」 「ごめん。足が竦むんだ」 「そう……」  もし私が平凡な生まれだったなら、家が裕福でなかったら駿太も当たり前に遊びに来てくれていたはずだ。駿太と離れて私は屋敷の門をくぐる。お父さんが大企業の社長であるためにこんなに無駄に広い屋敷に住む羽目になった。ここに遊びに来た友達は喜んでくれるけど、駿太だけは来てくれない。その理由はおそらく私に好意を抱いているからだ。  両親を避けているのだ。私は駿太もお父さんもお母さんも好きだけど、裕福であるというだけで恋一つ上手くいかない。駿太も駿太で誰かしらにお金目当てと言われる未来もあるだろう。  自室に向かって、カバンを投げてベッドに飛び込んで仰向けになる。 「なんでこんななんだろう……」  本当は文句を言えることは何一つないのに。お父さんもお母さんも駿太のことは悪く思っていないのに。ただ持ち過ぎただけでこんなことに。 「はぁ」  ため息も出るってものだ。
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