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屋敷は大きいのに住んでいるのはお父さんとお母さんと私だけ。こんな広い屋敷にする必要はないと思うのだけど、時々ホームパーティーもやるからお父さんには必要らしい。
「駿太くんは元気かい?」
夕飯の冷しゃぶをつつきながらお父さんは私に聞いてくる。
「元気だよ。遊びに来てくれればいいのにねぇ」
「駿太くんは一体何を気にしているんだろうね?」
お父さんは私も駿太もお互いに好意を抱いていることを気付いているのだろう。ただ、駿太が気にしているのは、お父さんの地位なんだよ。そんなのどうしようもないじゃん。
「まぁまぁ。中学生なんだから、ここを見て気後れしても仕方ないからね」
お母さんは駿太を庇うが、きっと高校生になっても同じだ。お父さんもお母さんも私の背中を押してくれるのは分かるんだけど、だからといっていい解決法なんか思い付かない。駆け落ちなんかしたくないし、反対されている訳でもないし、なんなら気持ちもまだ伝えてない。こういうの取らぬ狸の皮算用って言うんだっけ?
お父さんもお母さんも私から駿太の話を聞き出すのを楽しんでいる。昔からずっと。外で両親に会うときは普通に話すのに家にだけは来てくれない。外でお父さんの話すときも本当は緊張しているのかな?
お父さんの会社は結構な人が名前を知っている会社だし有り得る話だ。こんな状態じゃ恋人関係に昇格する可能性がなくなってしまう。
「何かないかな……」
ベッドで目を閉じる前に呟いた。私はその独り言を次の日、心底後悔した。
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