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次の日、学校に駿太は来なかった。夏風邪でもひいたのかな? とぼんやり考えていたらホームルームが終わったあと、クラスメイトが駿太の噂をはじめる。
「なぁ知ってるか? 駿太の親父、事故を起こしたらしいぜ?」
「マジか!? 親父さん、大丈夫なのか?」
「意識不明だってさ。その上、相手は死亡だとさ」
「駿太、それで休んでるのかよ……」
「まぁ噂だけどさ、親父さんの過失らしくて、裁判とかの可能性もあるって」
嘘……。そのクラスメイトの口を閉じてやりたかったが、そんな度胸はない。しかも私は駿太のお父さんの無事より駿太の心配より、私の心配をしてしまった。
駿太と恋人になれないかも知れない……。娘の恋人や配偶者の家族に前科があれば、お父さんの会社に影響を与えるかも知れない。情けないことに真っ先に私の頭を過ったのは、そのことだ。その私の思考に私は許せなくて、つい涙を流してしまった。
「美奈、どうしたの?」
クラスメイトの女子がすぐに気付いて声をかけてくれる。
「もしかして駿太のこと?」
何も言わずにただ泣くだけの私を見て、駿太の話をしていた二人を女子は叱りだす。
「あんたたち、配慮ってないの!?」
「いいの! ……ごめん、私帰るね……」
悪いのは男子でも駿太でも駿太のお父さんでもなくて、純粋な心配ができない私自身だ。私はなんて弱いんだ。お父さんは駿太のお父さんに過失があっても私と駿太が恋人関係になるのを受け入れてくれるだろう。だからこそ私自身が私に厳しくしないといけない。
その日から私の不登校がはじまった。駿太を避けるように。
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