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「美奈、少し落ち着きなさい」
お母さんは私を座らせて麦茶の入ったグラスを持たせる。
私だってどうしたらいいか分からないんだ。
「だったら美奈、こうしよう。美奈は駿太くんにちゃんと気持ちを伝えなさい。だが、美奈が私の会社に影響すると思うなら美奈と駿太くんが自立できたときにパートナーとなりなさい。そうなるまで数年必要になるが、二人がそれでもいいというなら私は応援する。二人が自立した一個人であるならば、駿太くんの家族に過失があったとしてもお父さんは請け合わないのも可能だ。それでどうだい? まずは気持ちを伝えてから悩んでもいいんじゃないか? 美奈も駿太くんもまだ何者でもない。今のうちに話し合いなさい」
私が何も答えられずにいるとお父さんは姿勢を崩して笑う。
「さぁ夕飯にしよう」
私の不登校は六日目になった。私は三日の間、駿太に渡す手紙を書いていたその三日、駿太は毎日通ってお母さんに私の様子を聞いていたようだ。駿太は優しいんだ。駿太が一番大変なのに。
私はお父さんの言ったことを手紙にしたためる。駿太のことが好きなこと。大変なときに逃げてしまった謝罪。きっと付き合ったらお父さんに迷惑をかけること。駿太のお父さんの容態の心配。そして、未来の約束。自立できたときにはじめて恋人になろうと。
それを書いている自分自身が本当に情けなくてぼろぼろと泣きながら書いた。私はお父さんの言うように本当に何者でもない。何も解決できないし、駿太を励ますこともできない。ただ絶望して逃げただけだ。
だからこそ駿太に気持ちの全てを届けるんだ。
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