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ご主人様の頼みでは断れません(高校生、片恋、友情、忠誠心)
今、このお坊ちゃんは何を言った。
日本語と言う物は時々、発信元と受け側とで意味を履き違えたりするものだ。
きっと今もそれだ、私は彼の日本語を正しく読み取れていないだけだ。
そうに違いない…そうである事を切に願う。
「俺と一緒に男子校に入学しよう!性別の壁なんて、俺が頼めば親父がどうにでもしてくれる」
あぁやっぱりだ、私の耳と脳は壊れてしまっているみたいだ。
彼の言ってる事が全く理解出来ない。
…私は、長かった髪を切った。
春から、私は晴れて男子高校生。
*****
「寿也様、もうそろそろ行かれませんと遅刻してしまいますが…」
次は科学。移動教室だ。
早く白衣を来て支度して頂きたいが、このお坊ちゃんは、教室から校庭ガン味をやめやしない。
お坊ちゃんの目はキラキラ輝いている。
お屋敷にいた頃の、全て諦めていた目をしていた頃のお坊ちゃんとはまるで別人だ。
この男子校に入って正解だったと思う。
その要因源とされる人物は今、校庭でサッカーボールを追いかけている。
「なぁ、結生」
「はい?」
「翔向ってかっこいいよな」
「…そうですね」
一つ年上で、寮では私達のルームメートの翔向君。
このお坊ちゃんは、翔向君にゾッコンだ。
中学時代、誘拐されそうになったのを助けられたのがキッカケらしい。
その時の翔向君が余りにかっこ良かったらしく、胸を撃ち抜かれたとかなんとか…。
それ以来、お坊ちゃんは翔向君に隠れストーカーだ。
翔向君を追って、決めれられたレールから降り、この男子校に入学を決められた。
お坊ちゃんの屋敷で、住み込みバイトのメイドとして働いていた私はその巻き添えだ。
勿論、寮の部屋割りも、お坊ちゃんの権力に寄る物だ。
「俺、絶対に翔向の親友になる。応援してくれるだろ?結生」
「寿也様が望まれるなら」
「有難う。結生大好きだ」
「私もです。さぁ、満足されたのなら、お早く支度を」
「…もぅちょっと駄目か?」
「駄目です。旦那様からは寿也様を甘やかさぬ様にと言われております」
「分かったよ。結生は真面目だな」
仕方なさげに白衣に腕を通し始めたお坊ちゃん。
私はお坊ちゃんの支度を待つ間、何となく校庭に目を置いた。
翔向君と目が合った様に思い、私は目を反らしていた。
「結生、支度終わったぞ…ってどうした?顔が赤いぞ」
「な、何でも有りません。理科室に向かいましょ」
さて、私は上手にお坊ちゃんの計画を応援出来るのだろうか。
と言うか、私は無事に三年間男装して居られるのだろうか。
《了》
恋愛要因はカナタ✕ユキ。
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