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パワハラ
俺が今の会社に新卒で入社したのは5年前の4月のこと。
この会社のお得意様である叔父の口利きがあったことも影響したのかは定かではないが、俺は順調に入社に至っていた。
その順調さは入社後も続き、俺は良い会社に恵まれたと喜んでいた。バラ色とまでは言わないが、友人たちから聞く近況報告と比べると、自分の環境が一番恵まれている様に思えていた。
ところが、3年が経過し4年目を迎える時、入社当初に地元の支社を希望していたこともあってか、俺は地元の支社に転勤となってしまった。
そこから俺の人生は一変、黒に近い灰色の毎日となってしまう。
体調不良、休日出勤、不安な日々。その全ての元凶は、転勤先の支社長、アイツのパワハラなのである。
とにかくアイツは誰かを怒鳴っていたいのだ。
転勤当時の矛先は俺ではなかった。俺の一年後輩の気の良い奴であった。だが、そのパワハラを受けていた後輩が、体調を崩し入院。そのまま退職に至ってからは、その矛先が俺へと移ってしまったのだ。
その退職をした後輩もそうだし、俺だってそうだ。何か特別な失敗をしたわけではない。もちろん、全く何失敗が無かった訳ではないが、他の同僚に比べ、特に目立ったことをした訳でも無い、なのにである。
きっと、この事を誰かに相談すると、退職を進める事だろう。それは分かり切っている。
でも、それは自分の抱えている仕事を投げ出すことになるし、同僚や顧客にも迷惑をかけることにもなる。
なにより紹介してくれ叔父の顔を潰すことになることになる。だから、退職など安易には出来はしない、遠い夢だと思っていた。
だけど、それは自信の行動を肯定する言い訳でしかない。それは、自分自身分かっていた。
事なかれ主義の俺は、本当はただ単に会社に退職届を出す度胸が無かっただけなのだ。
支社長の怒鳴り声を聞きたくなかっただけなのである。
きっと、彼は絶対に真っ赤顔で、デスクを拳で叩きながら今まで以上に怒鳴って来るに決まっている。それを俺は避けていた、逃げていただけなのだ…
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