1人が本棚に入れています
本棚に追加
元上司
その元上司は先月既に退職をしており、今は家業の農家をついでいるのだそうだ。
彼が言うには、退職前に相談してくれれば多少は何かが出来たかもしれないとのことだった。だが、その何かから相談したことがバレたら、俺は支社長から何をされるか分からない、その恐怖がある。
だから、元上司どころか、会社の人間い話すなんてことなんか俺に出来る訳がなかった。
しかし、退職した元上司ならば別である。直接助けになる行為は無理だろうけど、俺が他の誰かに話したとがバレる心配も無い。そんなこともあり、俺はそれもあって素直にパワハラの実態を話すことが出来たのかもしれない。
話した結果は、もちろん端的に退職を勧められた。
「毎日胃薬を飲み続けるのか」
「このまま痩せたら、骨と皮だけになるぞ」
「休みも無く働いて何のために生きてるんだ」とも言われた。
会社にしがみ付く理由も聞かれたが、そんなものある訳がない。ただただ辞める行動を取った時のことを想像するだけで怖かっただけなのだ。
元上司が言うには、そのパワハラの根源は「恐らくは支社長の持つ生理的な快楽がそこにあるのだろう」とのことだった。
偉くなってそんな人間になってしまった奴を何人か見て来たとのことであった。
更に、それは人事部になんか話しても、彼らにそれを止めることは出来ないだろうと言われた。会社の組合はもっとややこしい事になるとも言われた。それは俺もそう思う。
今の上司の支社長は外面の良さは元上司も知っていた。だから、この話をすると凄く驚いていたくらいであった。
それくらい立ち回りの上手い奴なのだ。
元上司は退職を簡単に進める人ではないことは俺も承知している。
その彼がこんなにもあっさりと退職を勧めたのである。更には、具体的に退職するための方法についても踏み込んでくれたのだ。
そうなると、俺としても本気にならざるを得なくなって行った。
最初のコメントを投稿しよう!