7人が本棚に入れています
本棚に追加
被る男
清田は瞳を輝かせて熱く語る。
「パンツを盗むのは私利私欲からでなく、純粋に役者として研究するためなんです」
「研究だと!?」
「私は役者を目指しています。いろいろな役をこなすためには、多種多様な人物のパンツを被る必要があります。そうすることで、私はその役になりきれるんです」
「なんだとー!」
「やっと安久代さんに納得してもらえて嬉しいです」
「納得するかー。どんな理由があろうともコインランドリーで男モノのパンツを盗むのは犯罪だ」
「だったら、歩いている人に片っ端から声をかけて『あなたのパンツを被らせてください』と言えば良いんですか?」
「いや、それは無理だろう。盗みとは別の罪になりかねない」
「そうでしょ。だから盗むしかなかったんです」
「まあ、そう言われれば確かにな…」
安久代は清田の話を聞いていると、清田の妖しい説明に不思議な説得力を感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!